2026.1.21 カルチャー

第10回 なんでもない家庭料理ラブ
小林聡美さんのエッセイを毎月1回お届けしています。
韓国ドラマの食事シーンが好きだ。
赤くて、緑で、クタクタで、一体何を食べているのかとても気になる。
お茶碗にご飯をモリモリよそう。主人公の女優も、口いっぱいに頬張って台詞をいう。鍋から直接食べるラーメンでさえすごく美味しそう。日本でもいろいろな韓国料理が食べられるし、気軽に韓国旅行もできる世の中だけれど、ああいう、ドラマに出てくるような家庭料理にはなかなか出会えない。
そんな私の欲望と疑問に応えてくれる韓国のリアリティ番組を動画配信サービスで発見した。三人の俳優が鄙
びた漁村で寝泊まりし、三食、自分たちでご飯を作って食べる、それだけの内容なのだが、これがいい。何がいいかと言えば、①漁村の自然の豊かさに癒され、②裏の畑で採ってきた野菜や鶏の卵、釣った魚で作る、韓国家庭料理の工程を見ることが出来、③据え置きのたくさんのカメラで、俳優さんたちの“素”が垣間見られる。韓国では人気シリーズだそうで、賞も受賞しているそう。
韓国料理はものすごく野菜を使う。そして、やはりにんにくと唐辛子の量もハンパない。そうかと思えば、さっぱりしたスープも美味しそう。驚いたのは、ハイブランドのアンバサダーも務める男優さんが、タコ、鯛、カサゴ、穴子など、あらゆるものをやすやすとさばき、キムチやカクテキなどもタレから美味しく作るスキルをお持ちなこと。クールなイメージとのギャップが面白い。そして毎回、皆、ものすごく美味しそうにモリモリ食べる。美味しく食べる姿は、人を幸せにするなぁと、改めて思う。
なんだか自分でもやってみたくなった。手軽にできそうなのが、ご飯とおかずを葉っぱで手巻きにして食べるサムパプというもの。試してみたら、ご飯と葉っぱのマリアージュが新鮮。肉でも魚でもご飯と巻いて食べる。番組内でも「サムパプにしよう」となったら、皆のテンションがあがっていた。人気料理なのだろう。
にしても、三食作って食べることは本来大仕事なのだな、と思う。火を起こし、野菜を採って、魚を釣って、洗って、煮焼きし、食べて、片付けて、寝る。それだけで一日なんてすぐ過ぎてしまう。でもだからこそ、ものすごく美味しくご飯が食べられるのだろう。一度でもキャンプをしたことのある人なら、きっと共感するはず。
サムパプはお肉もおかずもご飯もなんでも巻いていいので、楽チンでいい。私の食卓はしばらく、“サムパプブーム”です。幸せぇ。
小林聡美
1965年東京生まれ。1982年に「転校生」でスクリーンデビュー。主な出演作にドラマ「団地のふたり」「ペンションメッツァ」「すいか」、映画「かもめ食堂」「紙の月」「ツユクサ」、舞台「24番地の桜の園」「阿修羅のごとく」。主な著書に『茶柱の立つところ』『わたしの、本のある日々』『聡乃学習』。